· 

[日本の食料自給率について考えるシリーズ2]農業改革にとりくんできた先輩方

緊急事態宣言が発令される直前の4月、図書館で2冊の興味深いタイトルの書籍を見つけ、ゴールデンウィーク中に読みました。

食料自給率100%は可能だ 天才農業研究者のシナリオ (小学館101新書) | 永田 照喜治 |本 | 通販 | Amazon

 

永田照喜治さんは、有機物を与えないやせた土で、水と肥料を極限まで抑えて作物を育てる「永田農法」を確立し、世界的な農業指導者として活躍されたことで有名な方。2016年にお亡くなりになるまで、日本のみならず、海外からも呼ばれ、農業指導に従事されていました。

 

この本が出版されたのは、2011年。今からちょうど10年前。情報としては古いのかもしれませんが、あまりに勉強になるので、またもや改めて購入し、今手元に置いています。

何が勉強になるか、それは永田さんが、その当時、いろんな側面から農業に携わる著名人たちと対談をした内容が書かれているところです。なんと14人もの方との対談!作家、実業家、大手メーカー役員、養鶏家、種苗会社社長、無洗米先駆者などなど。その中でも、私はこの本で、現在、自民党衆議院議員の鈴木憲和さんのことを知りました。当時は、農林水産省の官僚だったそうで、農業の課題に熱心に取り組んでいらっしゃったようです。わたしと同じ歳ということもあり、いつかお会いして日本の食料自給率に関する課題と展望などについてお話を伺ってみたい、と思いました。

 

永田さんはあとがきに、”日本の食料自給率が、2006年度40%を切った、という衝撃的なニュースをきっかけに、この対話は始まりました。”と書かれています。

私がKANKIKUのビジョンについて、ウェブサイトで書かせていただいていることに通じることをこのあとがきの196ページに書いておられて、深く感銘を受けました。

 

日本という国は、とてもおいしい野菜や果物をつくることができる国であることは、みなさんもよくご存じだと思います。

 作ることができるのにもかかわらず、日本での生産量を減らして、輸入を増やそうという政府の愚策のために、食料自給率は低下しただけなのです。”

 

中でも、大豆の自給率はわずか6%というお話。(※2011年時点でのデータです)

 

”豆腐や味噌、醤油といった日本人の食文化を支えている大豆製品が、輸入大豆に頼っているというのは、とても奇妙に感じませんか?”

 

そうだよな・・・ちなみに10年経った現在の状況はどうなのだろうか。

 

農林水産省のHPに、大豆のまめ知識が掲載されていますので一部紹介します↓

 

Q.5 大豆の自給率は?

A.
    平成29年の大豆の自給率は7%です。
 ただし、サラダ油などの原料となる油糧用を除いて食品用に限りますと、自給率は25%となります。

【解説】
   平成29年度の国内の需要量は約357万tで、うち国産大豆は約25万tです。国産大豆は種子用(8千t)を除きますと、全量が食品用であるため食品用(需要量約99万t)の自給率は高くなります。

正直、よくわかりませんね・・・少ないと言いたいのか、自給率は高くなってきていると言いたいのか??

 

しかしながら、スーパーで見かける醤油、味噌、納豆、豆腐の原材料表示項目を見ると、大半のコスパの良い商品(=一番、販売量が多い)は、たいがいカナダなどの輸入大豆(遺伝子組み換えでない、とわざわざ記載していて、そうでないものが逆にどれなのか知りたいです)ですよね。前回の、カナダの食料自給率が200%超えているというのも、カロリーの高い品目を大量に生産し、海外向けに輸出しているという背景がここに表れていることもわかります。

ということは、2021年の今現在も、実際に市場に出回っている和食の定番である大豆製品の大半は、輸入ものであると言っても良いでしょう。10年で何も変わらず・・・ 

 

 

 

ギャル農業 (中公新書ラクレ) | 藤田 志穂 |本 | 通販 | Amazon

 

コギャルブームだった当時、私も10代でした。ギャルではなかったけれど・・・ソックタッチ塗って、ルーズソックスは履いていたなぁ・・・懐かしい。

なんとなく、テレビでギャルが会社起業して、農業にも取り組んでいるというのを見た記憶があり、そのギャルの藤田志穂さんの書籍というのがあるんだ、と読んでみました。

農業従事者の平均年齢は、全国で平均69歳、70代というところもありますので、それに対する危機意識はありますよね。それは、藤田さんが農ギャルプロジェクトを立ち上げたときもそうだったし、でも実際10年経っても、課題はなんら解消されていない。

 

しかし、農ギャルプロジェクトは、素晴らしい取り組みだったと思います。

起爆剤となり、農業のイメージアップを図り、農業への関心を若い世代に発信してきたことはとても大きな功績だったと思います。

今、藤田さんは農業から離れていらっしゃるようですが、発酵食品などの食育にかかわる活動をされたり、ギャル起業した際の経験が今の人生につなげられていることを拝見すると、KANKIKUとして事業を立ち上げたばかりの私にも大きな励みとなります。

 

この本を読んで、新たな気づきがあったことは2つ。

 

KANKIKUは、農林水産省の「フードアクションニッポン」の推進パートナーになっていますが、フードアクションニッポンって、10年以上前からすでにあったんだ、ということ・・・苦笑。

 

そして、ここでも、藤田さんが「食料自給率が40%しかない日本を変えたい。」と書いていたこと。

糖質を気にして、炭水化物を取らない食生活をしている方が多いけれど、それは誤解もあって、日本中の若い女性層が、一人1口か2口毎日お米を食べるだけで食料自給率が2%は上がる、というデータもあること。

 

 

ということで、この2冊を読み、つまるところ、日本の食料自給率の数字を上げたいのであれば、お米や大豆、小麦の生産を増やし、日本国内みんなでせっせと国産の穀物、大豆を食べましょう、ということが理想なのだということを感じました。

そして、とりわけお米は輸出にも力を入れる、というのが良い策のようです。特に永田さんは、農業人口は減ってもらった方がいい、と書いているのですよ。

大きなスケールで取り組むやる気のある方が新規参入も含め農業をやれる仕組みを作り、お米は海外輸出展開強化することを推しています。時代は10年経ちまして、和食が海外でも注目され、私自身、3年前にスウェーデンを再訪した時には、15年前と比べ、格段に寿司屋が増えていて驚きました。

最近の日本のお米の輸出量はきっと増えている?その点は、まだリサーチ不足ですので、調べてみたいです。

 

そして、わたしはKANKIKUの事業コンセプトを見直す必要があるかもしれない、とも考え始めています。

立ち上げ当初、わたしは、食料自給率38%を2年以内に40%に上げたい、という数字目標を自分の中で掲げたのですが、日本の食料自給率はおそらくこの先10年も上がらないだろう、と悟りました。

 

正直、がっかりしました。

 

永田さんや永田さんが対談された第一線で活躍する方々、また藤田志穂さんのような若い女性起業家が食料自給率向上に尽力されても、結局この10年で自給率の数字は、40%どころか38%に下がってしまいました。

国としては、食料自給率向上のキャンペーンをやっている風を演出し、実は上げるつもりはないのだろうなと。

カロリーベースである食料自給率38%という数字を上げることにこだわるのは、意味がないのかもしれない。食料自給率を向上という背後にある、ここを改善して良い未来につなげられる取組みはじつはちょっと違うことなのかもしれない・・・KANKIKUとして活動し始めて、野菜農家さんやお茶農家さんとお話するようになり、第一次産業の方が私たちの食や文化を支えてくれていること、そこに着目していきたい。

 

そんなことを考え始めました。

 

次回は、きく子’sChoice で、わたしの最近のお気に入りの食べ物を紹介していきたいと思います!